2018年5月9日水曜日

Fire Bugs(ピアノ火事)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1930年5月9日
評価:★7

シュールで荒々しい作画が楽しい一作


『トーカートゥーン』第6作、ビン坊が登場する2番目の作品である。作画はトーキー初期のフライシャー・スタジオを牽引したテッド・シアーズとグリム・ナトウィック。『Swing You Sinners!』や『Barnacle Bill』を彷彿とさせる荒々しくシュールな作画が見ものだ。
消防士のビン坊と馬が火事場へと向かい、ピアノ演奏に夢中になっているピアニストを救出しようと奮闘する物語であり、ストーリーや作品設定に特筆性は余りない。注目すべきはアニメーションと劇伴音楽だろう。

ルー・フライシャーがスタジオの音楽監督に就任したことにより前作『Hot Dog』で突如開花した『音楽とアニメーションの見事なシンクロ』は、本作でも遺憾なく発揮されている。
作品冒頭ではノリの良いジャズが効果的に用いられ、ネズミや馬、そして靴や蹄鉄までもがリズムに乗ってスウィングする。中盤ではお調子者の馬がメンデルスゾーンの『春の歌』に乗せて優雅に踊り、終盤ではピアノ演奏に没頭するあまり火事に気付かないピアニストが『ハンガリー狂詩曲』を熱演。これら全てのアニメーションが見事に音楽とシンクロしており、ギャグとしてもなかなか出来が良い。

まだまだアニメーションは洗練されておらず、試行錯誤の跡が垣間見える。だが、野暮ったくゴム紐のようにスウィングするこの雰囲気は何ものにも代え難い。
フライシャー・スタイルがまだ確立していなかった時期に作られた、狂気に満ちた注目すべき佳作である。

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